「アウディA8は故障しやすい」―オーナーや購入を検討する方なら一度は耳にするこの言葉。
この記事では、その噂の真相を解き明かすべく、アウディA8の注意すべき弱点を徹底解説します。
特にトラブル報告の多い重要故障個所リストや、A8の泣き所であるエアサスの寿命など、オーナーとして知っておくべき注意すべきポイントを詳しく解説。
さらに、リアルな年間維持費も具体的にシミュレーションし、A8と賢く付き合うための全知識をお届けします。
記事ポイント
- 「故障しやすい」という噂の真相と、エアサスやエンジンなど具体的な弱点
- エアサス交換などの高額な修理費用から、税金まで含めたリアルな年間維持費
- 故障リスクの低い「狙い目」の年式と、後悔しない中古車の具体的な選び方
- アウディA8の弱点を理解した上で、長く安心して乗り続けるための賢い付き合い方や予防策
アウディA8は故障しやすい?噂の真相と注意すべき弱点を徹底解説
- なぜ中古のアウディA8は安い?「壊れやすい」という噂と本当の理由
- 【部品別】アウディA8で特に壊れやすい重要故障箇所リスト
- エンジン・駆動系トラブルは高額修理の元!注意すべきポイント
- A8の泣き所!エアサスの寿命と高額な電気系統の故障事例
なぜ中古のアウディA8は安い?「壊れやすい」という噂と本当の理由
新車では2,000万円に迫ることもあるA8が、なぜ中古車市場では驚くほど手頃な価格で流通しているのでしょうか。
その理由は、単に「壊れやすいから」という一言では片付けられません。そこには、オーナーと購入検討者が知っておくべき、4つの要因が複雑に絡み合っています。
なぜ中古のアウディA8は安いのか?
「壊れやすい」という噂と4つの本当の理由
高額な維持費への懸念
故障時の部品代や工賃が国産車より高額になる傾向が。特にエアサスや電子部品の修理は数十万円単位になることもあり、この維持コストへの懸念が価格を押し下げる最大の要因です。
故障リスクへの警戒感
「輸入車は壊れやすい」という一般的なイメージに加え、日本の高温多湿な気候が繊細な電子部品に与える影響も懸念されます。「安く買えても修理で高くつく」という心理が、購入のハードルを上げています。
中古車市場の供給バランス
A8は法人名義のリース車両として利用され、数年で中古市場に流通するケースが多数。そのため、需要に対して供給量が潤沢になり、価格が下がりやすい市場環境が生まれています。
ブランドイメージと立ち位置
メルセデス・ベンツやBMWといった強力なライバルと比較した際のリセールバリューの差も価格に影響します。ブランドの立ち位置や市場での評価が、中古車価格に反映される一因となっています。
- 理由1:高額な維持費への懸念: 中古価格を形成する最大の要因は、購入後の維持コスト、特に「万が一の修理費用」に対する懸念です。
- 部品代と工賃の高さ: A8に採用される部品は高性能かつ高機能なため、国産車の1.3倍から1.5倍の価格になることも珍しくありません。さらに、複雑なシステムを整備するための専門知識が必要となり、工賃も高めに設定される傾向があります。
- 定期メンテナンスの重要性とコスト: その卓越した性能を維持するには、メーカーが指定する質の高いオイルや消耗品を使った定期的なメンテナンスが不可欠です。このランニングコストが、次のオーナーへの心理的なハードルとなり、結果的に車両価格を押し下げる要因となっています。
- 理由2:故障リスクへの心理的な警戒感: 「輸入車は壊れやすい」という一般的なイメージに加え、「安く買えても、修理で結局高くつくのでは?」という心理的な警戒感が、購入に二の足を踏ませる一因です。特に、高温多湿な日本の気候は、欧州で設計された車両の繊細な電子部品やゴムパーツの劣化を早める可能性も指摘されており、この事実がリスクとして認識されています。
- 理由3:中古車市場における供給と需要のバランス: A8は、法人名義の社用車として登録され、数年のリース期間を経て中古車市場へ流通するケースが少なくありません。そのため、年式の割に状態の良い車両が潤沢に供給される傾向にあります。この「需要に対する供給の多さ」が、価格が下がりやすい状況を生み出しているのです。
- 理由4:他ブランドと比較した際のイメージ:メルセデス・ベンツ SクラスやBMW 7シリーズといった強力なライバルと比較された際の、ブランドイメージやリセールバリューの差も、中古価格に影響を与える一因とされています。
ひさ: 「私たちが中古車オークションのデータを分析すると、A8はライバルのSクラスや7シリーズに比べ、3年後のリセールバリューが5%〜8%低い傾向にあります。これはまさに『高額な維持費への懸念』が市場価格に反映されている証拠です。」
誠: 「お店に来るお客様も、『A8はエアサスが壊れたら100万円コースなんでしょ?』と心配されます。そのイメージが先行しているのが一番の理由ですね。でも、実際にはもっと賢い付き合い方があるんです。それをこれからお話しします。」
【部品別】アウディA8で特に壊れやすい重要故障箇所リスト
では、具体的にアウ-ディA8のどこに注意を払うべきなのでしょうか。ここでは、特にトラブルの報告が多いウィークポイントを3つのカテゴリーに分けて解説します。
ご自身の愛車のセルフチェックや、中古車選びの際の重要な判断基準としてご活用ください。
【部品別】アウディA8の重要故障箇所リスト
特に注意すべき3つのウィークポイント
足回り
エアサスペンション
A8の代名詞である快適な乗り心地の要。しかし、ゴム部品の経年劣化によるエア漏れは定番トラブル。車高の異常や乗り心地の悪化は危険信号です。
エンジン・駆動系
オイル漏れ・冷却系など
車の心臓部であり、トラブルは高額修理に直結。オイル漏れ、水漏れ、タイミングチェーンの異音など、小さなサインを見逃さないことが重要です。
電気・電子制御系
センサー・エアコンなど
無数のセンサーで制御される現代の高級車ならではの弱点。警告灯の点灯やエアコン、ナビ(MMI)の不具合など、トラブルは多岐にわたります。
- 足回り:エアサスペンション:A8の代名詞ともいえる雲の上のような乗り心地の要ですが、同時に最も注意が必要な箇所です。経年劣化によるエア漏れは定番のトラブルで、乗り心地の悪化や車高の異常といった症状で現れます。
- エンジン・駆動系:オイル漏れ、冷却系、タイミングチェーンなど: 車の心臓部であり、トラブルは高額修理に直結します。ゴム部品の劣化によるオイル漏れ、ラジエーターからの水漏れ、そして特定エンジンで報告されるタイミングチェーンの異音などは、特に注意深く観察すべきポイントです。
- 電気・電子制御系:各種センサー、エアコン、ナビシステムなど: 現代の高級車であるA8は、数多くの電子部品で制御されています。そのため、各種センサーの異常による警告灯の点灯や、エアコン、ナビ(MMI)といった快適装備の不具合も散見されます。
エンジン・駆動系トラブルは高額修理の元!注意すべきポイント
A8の滑らかかつパワフルな走りを支えるエンジンと駆動系は、まさに車の心臓部です。しかし、その高性能で複雑な構造ゆえに、一度トラブルが発生すると深刻なダメージや高額な修理につながる可能性があります。
ここでは、特に注意すべき4つのポイントを、オーナー様が日頃からチェックできる症状とあわせて解説します。
エンジン・駆動系トラブルは高額修理の元!
特に注意すべき4つのポイント
オイル漏れ・過剰消費
原因: ゴム製シール類の経年劣化が主。
リスク: 放置すると漏れたオイルが他の部品を故障させる二次被害も。駐車場の地面のシミは要チェックです。
冷却システムのトラブル
症状: ラジエーターやウォーターポンプからの水漏れ。
危険性: オーバーヒートはエンジンに致命的なダメージを与えます。水温警告灯の点灯は絶対に見逃せません。
タイミングチェーンの不具合
初期症状: エンジンが冷えている時の始動直後、「ガラガラ」という金属音。
修理: エンジン脱着を伴う大掛かりな作業になる可能性が高く、費用も数十万円単位になることがあります。
トランスミッション (Sトロニック)
症状: 発進・変速時のショックや、ギクシャクとした動き。
予防策: 最も有効なのは定期的なフルード交換。精密な機械だからこそ、日頃のメンテナンスが重要です。
- オイル漏れ・過剰消費: 欧州車全般、特にアウディでは定番ともいえるトラブルですが、決して軽視はできません。
- 原因:日本の高温多湿な気候が、エンジン各部に使われているゴム製のパッキンやシール類の劣化を早める一因とされています。
- 放置するリスク:駐車場の地面にできた小さなシミを放置した結果、漏れたオイルがオルタネーター(発電機)などの熱を持つ電装部品にかかり、二次的な故障を引き起こすケースも。オイル消費の異常は、エンジン内部の問題を示唆している可能性もあります。
- 冷却システムのトラブル: エンジンの熱を適切に管理する冷却システムは、A8の繊細なエンジンを守るための生命線です。
- 症状:ラジエーター本体や接続ホース、ウォーターポンプからの冷却水(クーラント)漏れが代表的です。甘い匂いがしたら、冷却水漏れを疑いましょう。
- 危険性:水温警告灯の点灯は、エンジンからの重大なSOSサイン。オーバーヒートはエンジンに致命的なダメージを与え、最悪の場合エンジン交換が必要になるため、速やかに安全な場所に停車し、専門家へ連絡することが鉄則です。
- タイミングチェーンの不具合 特にV8エンジンを搭載したモデルのオーナー様は、この症状にご注意ください。
- 初期症状:朝一番など、エンジンが冷えている時の始動直後、数秒間「ガラガラガラ…」という金属が擦れるような異音が聞こえたら、それはタイミングチェーンが伸びているサインかもしれません。
- 修理:この修理はエンジンを車体から降ろす大掛かりな作業となることが多く、費用も数十万円単位と高額になりがちです。異音に気づいたら放置せず、早めにプロの診断を受けることが重要です。
【誠の体験談】放置して修理費150万円になったケース
以前、冷間時の異音を「そのうち治るだろう」と放置してしまったA8オーナー様がいました。最終的にエンジン内部でチェーンが暴れてしまい、エンジン載せ替えコースに…。修理費は150万円を超えました。朝一の「ガラガラ」音は、エンジンからの最後のSOSです。絶対に軽視しないでください。
- トランスミッション(Sトロニック): アウディの先進技術の象徴でもあるSトロニックですが、その精密さゆえにデリケートな一面も持ち合わせています。
- 症状:信号待ちからの発進時にもたつく、あるいは変速時に「ガツン」という大きなショックを感じるようになったら、注意が必要です。
- 予防策:最も有効な予防策は、メーカー推奨サイクルでのDSGオイル(ATフルード)の定期的な交換です。これを怠ると、内部の精密な制御ユニット(メカトロニクス)に不具合が生じるリスクが高まります。
A8の泣き所!エアサスの寿命と高額な電気系統の故障事例
A8の快適性を象徴する装備でありながら、オーナーを悩ませる「泣き所」とも言われるのが、エアサスと複雑な電気系統です。ここでは、避けては通れないこれらのトラブルについて、具体的な症状と原因を解説します。
- エアサスペンションの故障: 「一晩停めておいたら、片側だけ車高がぺったんこになっていた」というのは、A8のエアサス故障で最も典型的な症状です。
- 主な症状:
- 駐車中に車高が異常に下がる、または傾く
- メーターにサスペンション異常の警告灯が点灯する
- 走行中の段差で跳ねるような、硬い乗り心地になる
- 原因:乗り心地を支えるゴム製のエアバッグは消耗品であり、経年劣化によるエア漏れは避けられません。さらに、漏れを補おうとコンプレッサー(空気を送り出すポンプ)が働き続けることで、二次的な故障を誘発する悪循環に陥りがちです。
- 主な症状:
- 電気系統の多様なトラブル 数多くのコンピューターとセンサーで制御されるA8は、電気系統のトラブルも多岐にわたります。
- オルタネーター(発電機):バッテリーへの電力供給を担う重要な部品です。故障すると、最悪の場合、走行中に突然パワーステアリングが効かなくなる、エンジンが停止するといったリスクがあり非常に危険です。
- エアコン:特に夏場に酷使されるエアコンのコンプレッサーは、焼き付きや異音といったトラブルが発生しやすい箇所。関連部品を含めたシステム全体の修理が必要になることが多く、費用が高額化しやすい傾向にあります。
- MMI(ナビシステム):A8のインフォテインメントの中核ですが、突然画面がブラックアウトしたり、操作不能になったりする事例が報告されています。原因特定が難しく、修理費用が数十万円に及ぶ可能性もあります。
- 各種センサー類:メーターパネル内に突如点灯する警告灯。その多くは、様々な箇所に張り巡らされたセンサーの異常が原因です。走行に直接影響がない場合でも、放置せずに原因を特定することが、大きなトラブルを未然に防ぐ鍵となります。
故障しやすいア-ウディA8と賢く付き合うための維持費・選び方ガイド
- エアサス交換はいくら?知っておくべきA8の修理費用
- 年間維持費はXX万円?アウディA8のリアルな費用内訳を解説
- 狙い目はある?年式で見るアウディA8の信頼性と選び方
- 【Q&A】アウディA8の故障に関するよくある質問
エアサス交換はいくら?知っておくべきA8の修理費用
A8のウィークポイントとして挙げたエアサスペンションですが、実際に交換となるといくらかかるのか、多くのオーナー様、そして購入検討者様が最も気になるところでしょう。
エアサス交換はいくら?
知っておくべきA8の修理費用
交換費用の目安 (1本あたり)
約250,000円~
※ただし、総額は以下の3つの要因で大きく変動します。
1. 部品の選択
純正品は高品質ですが1本30万円超と高額。コストを抑えるなら、品質の高い社外品・リビルト品を選ぶのが賢い選択です。
2. 修理工場の選択
安心感のある正規ディーラーは工賃が高め。一方、アウディに詳しい専門工場なら、社外品を使った柔軟で費用を抑えた修理提案が期待できます。
3. 故障箇所の範囲
エアサス本体だけでなく、空気を送るコンプレッサーや制御バルブなど、関連部品も同時に故障している場合は、交換部品が増え総額が大きく上がります。
エアサス交換費用の目安:約25万円~
アウ-ディA8のエアサスペンション交換は、1本あたり約25万円からが一つの目安となります。ただし、これはあくまで最低ラインであり、選択する部品や工場の違い、そして故障の状況によっては1本50万円を超え、複数箇所の交換となると100万円に迫るケースも報告されています。
その費用を大きく左右するのが、以下の3つの要因です。
- 要因1:部品の選択(純正品 vs 社外品・リビルト品)
- 純正部品:品質と信頼性は最も高いですが、価格も最も高額です。1本あたり30万円を超えることもあり、ディーラーで交換する際の高額な見積りの主な要因となります。
- 社外品・リビルト品:コストを抑えるための賢い選択肢です。品質の高いOEMメーカーの製品や、専門業者が再生したリビルト品(再生部品)を選ぶことで、純正品の半額以下に費用を抑えられる可能性も。ただし、安価すぎる製品には品質にばらつきがあるため、信頼できる工場と相談して選ぶことが極めて重要です。
- 要因2:修理工場の選択(正規ディーラー vs 専門工場)
- 正規ディーラー:メーカーの基準に沿った確実な作業と安心感が魅力ですが、工賃は高めに設定されています。原則として純正部品を使用します。
- 専門工場:アウ-ディを専門に扱う工場では、豊富な知識と経験に基づき、社外品やリビルト品を使った柔軟な修理提案が期待できます。費用を抑えたい場合の力強い味方となるでしょう。
- 要因3:故障箇所の範囲(本体のみ vs 関連部品も交換) エアサス本体のエア漏れだけでなく、空気を送り出すコンプレッサーや圧力を制御するバルブブロックといった関連部品も同時に劣化しているケースは少なくありません。その場合、交換部品が増えるため総額はさらに上がります。
【誠からのアドバイス】修理費用を賢く抑える最善の方法
ディーラーで「交換費用80万円」と言われても、すぐに諦めないでください。腕の良いアウディ専門の整備工場なら、高品質な社外品(OEM品)を使って半額以下の30〜40万円で修理できるケースも珍しくありません。重要なのは、純正品に固執せず、信頼できる部品と工場を選ぶことです。私たちのような専門知識のある店を「主治医」として持っておくことが、A8と賢く付き合う最大の秘訣ですよ。
年間維持費はXX万円?アウディA8のリアルな費用内訳を解説
アウ-ディA8を所有するということは、そのステータスと快適性を享受する一方で、相応の維持コストを受け入れることを意味します。
車両の状態や乗り方によって大きく変動しますが、一つの目安として年間80万円~、そして突発的な修理に備えた別途の積立金を想定しておくと安心です。
ここでは、3.0Lモデル(55 TFSI quattroなど)を年間1万km走行した場合の具体的な費用をシミュレーションしてみましょう。
▼アウディA8 年間維持費シミュレーション
年間維持費はいくら?
アウディA8のリアルな費用内訳(3.0Lモデル シミュレーション)
※上記の金額はあくまで目安であり、車両の状態やお住まいの地域、利用状況によって変動します。
【重要】修理費用積立のすすめ
上記のシミュレーションは、あくまで故障がなかった場合の基本的な維持費です。A8と安心して長く付き合うには、この基本費用に加えて、いつ起こるか分からない故障に備えた年間20万円~40万円程度の修理費用を別途積み立てておくことを強く推奨します。この備えがあるかどうかで、万が一のトラブル発生時の精神的な負担は大きく変わってきます。
狙い目はある?年式で見るアウディA8の信頼性と選び方
アウディA8と一括りに言っても、その信頼性はモデルの世代や年式によって大きく異なります。ここでは、過去のトラブル報告や改良の歴史から、賢くリスクを避けるための年式選びのポイントを解説します。予算と信頼性のバランスを見極める上で、最も重要な指針となるでしょう。
狙い目はある?
年式で見るアウディA8の信頼性と選び方
信頼性が高い「狙い目」の年式
2015年以降の後期モデル (D4後期)
予算に余裕があれば最良の選択。現代的な装備と高い信頼性を両立しています。
2007年~2010年の中期モデル (D3後期)
コストを抑えつつ信頼性も確保したい方向け。初期モデルの弱点が改良されています。
購入に注意が必要な年式
D3世代初期 (2003年~2005年)
特に電気系統のトラブル報告が多数。購入には相応のメンテナンス費用を覚悟する必要があります。
D4世代初期 (2011年~2013年)
新世代への移行期で、初期ロット特有の問題を抱える個体も。対策部品への交換履歴の確認が必須です。
年式以上に重要な2つのチェックポイント
整備記録簿(メンテナンス履歴)の確認
車の「健康診断書」。オイル交換の頻度など、前オーナーの愛情がここに記されています。
信頼できる販売店の選定
A8の整備実績が豊富で、購入後も相談できる誠実な店選びが成功の鍵です。
信頼性が高いとされる「狙い目」の年式
- 2015年以降の後期モデル(D4後期): 予算に余裕があり、現代的な装備と高い信頼性を両立させたいなら、この年式が最良の選択肢です。D4世代の中でもマイナーチェンジ後のモデルであり、初期に報告されたトラブルの多くが解消されています。特に運転支援システムが充実し始めた時期でもあり、満足度の高い一台が見つかる可能性が高いでしょう。
- 2007年~2010年の中期モデル(D3後期): コストを抑えつつ、A8ならではの世界観をじっくりと味わいたい方におすすめなのが、この世代です。故障が頻発したD3世代の初期モデルから大幅に改良が進み、特に電気系統の安定性が向上しました。「古き良きA8」の雰囲気を、比較的少ないリスクで楽しめるバランスの取れた選択肢です。
購入に注意が必要な年式
逆に、以下の年式は多くのトラブルが報告されており、購入には専門家による入念なチェックが不可欠です。
- D3世代初期(2003年~2005年): 特に電気系統のトラブルが多く、「警告灯のオンパレード」と揶揄されることもありました。価格的な魅力は大きいですが、相応のメンテナンス費用を覚悟する必要があります。
- D4世代初期(2011年~2013年): 新世代への移行期であり、タイミングチェーンや初期の電子システムに問題を抱える個体が散見されました。この年式を選ぶ際は、対策部品への交換履歴などを必ず確認しましょう。
中古車選びで最も重要なポイント
しかし、年式以上に重要なのが個々の車両のコンディションです。 最高のA8と出会うために、以下の2点は必ず実行してください。
- 整備記録簿(メンテナンス履歴)の確認: これは、車の「健康診断書」であり「カルテ」です。いつ、どこで、どのような整備や部品交換が行われてきたか。特に、オイル交換の頻度や、トランスミッションフルード、そして先述したウィークポイントの部品交換履歴が記されていれば、それは前オーナーが愛情を注いできた証です。
- 信頼できる販売店の選定: A8のような複雑な車を、売りっぱなしの販売店から購入するのは非常に危険です。アウディの整備実績が豊富で、購入後のメンテナンス相談にも親身に乗ってくれる、誠実な販売店を見つけることが、成功する中古A8選びの鍵となります。購入を検討している車両の車台番号が分かれば、先ほどの国土交通省のサイトでリコールの対象になっていないか、対策済みかを確認するのも有効な手段です。
【Q&A】アウディA8の故障に関するよくある質問
最後に、これまで解説してきた内容を踏まえ、アウディA8の故障に関して多くの方が抱く疑問に、Q&A形式で簡潔にお答えします。
- アウディはよく壊れる車ですか?
世界一の品質を誇る日本車を基準にすると、「壊れやすい(=手がかかる)」傾向にあるのは事実です。しかし、これは欠陥ではなく、高性能を維持するために定期的な部品交換を前提とする設計思想の違いでもあります。近年のモデルは品質が飛躍的に向上しており、「すぐに壊れる車」という認識は過去のものと言えるでしょう。
客観的なデータとして、国際的な調査機関であるJ.D. パワーが毎年発表する「自動車耐久品質調査」も参考になります。アウディが他のブランドと比較してどの位置にいるのか、最新の評価を確認することで、より多角的な判断が可能になります。
▶︎ J.D. パワー ジャパン:日本自動車耐久品質調査(VDS)「アウディはよく壊れる」という評判について、さらに深く掘り下げてみましょう。こちらの動画では、元ディーラー整備士の方が、アウディで実際に起こりやすい具体的な故障箇所(冷却系統、オイル漏れ、DSGなど)を挙げながら、その真相について解説しています。プロの視点からのリアルな情報として、非常に参考になるはずです。
- アウディA8の維持費はいくらですか?
前の章でシミュレーションした通り、基本的な維持費だけでも年間80万円以上、さらに突発的な故障に備えた積立金を含めると、年間100万円~200万円を見ておくのが現実的なラインです。このコストを受け入れられるかが、A8オーナーになるための一つの基準となります。
- アウディの壊れやすい部品は?
A8で特に注意すべき「3大ウィークポイント」は
①エアサスペンション
②オイルや水漏れの原因となるエンジン周りのゴム・樹脂部品
③無数に張り巡らされた各種センサー類です。これらのコンディションを見極めることが、購入時も所有時も重要になります。
- アウディとBMWはどちらが壊れやすいですか?
これは永遠のテーマですが、各種の信頼性調査データを見ても両者に統計的な優位差はなく、「故障率はほぼ同程度」というのが客観的な答えです。どちらのブランドを選ぶにせよ、重要なのはブランドイメージではなく、目の前にある一台のコンディションとメンテナンス履歴です。良い個体を見極める眼こそが、豊かなドイツ車ライフを送るための鍵となります。
【総括】「アウディA8は故障しやすい」は真実か?リスクを理解し最高のパートナーと付き合う方法
アウディA8は、確かに国産車と同じ感覚では付き合えない繊細な一面を持っています。しかし、その弱点を「個性」として正しく理解し、予防的なメンテナンスを施すことで、他のセダンでは決して味わえない至高の時間を提供してくれます。
この記事の要点を今後のカーライフにお役立てください。
- 中古車が安いのは高額な維持費と修理リスクへの懸念が最大の理由
- 「故障しやすい」という噂は世界一タフな日本車が比較基準のため
- 最重要注意部品は乗り心地の要であるエアサスペンション
- エンジン周りのオイル漏れや水漏れは定番のウィークポイント
- 冷間始動時の「ガラガラ」音はタイミングチェーン異常のサイン
- エアコンやナビなど電気系統のトラブルも覚悟が必要
- エアサス交換は1本25万円からが目安で高額化しやすい
- 年間維持費は基本80万円+修理積立金が現実的なライン
- 突発的な高額修理に備え年間20万円以上の積立を推奨
- 狙い目の年式は信頼性が向上した2015年以降の後期モデル
- コストを抑えるなら改良が進んだ2007年~2010年の中期モデルも選択肢
- 年式以上に個体のコンディションと整備記録簿が重要
- 信頼できるアウディ専門の整備工場を主治医として見つける
- トラブルの多くは予防的なメンテナンスで回避または軽減できる
- BMWとの故障率に大差はなくブランドより個体を見極める